指が動かない。声帯の機能も失われつつあった。だから、「ごめん、フレデリカ。ごめん、ユリアン。ごめん、みんな…」という声を聴いたのは彼以外にいなかった。否、自分でそう思っただけかもしれなかった。宇宙暦八〇〇年六月一日二時五五分。ヤン・ウェンリーの時は三三歳で停止した。